「約束のある女子は最強。」
というのは『サプリ』で、
あのもじゃもじゃ頭の写真家と温泉旅行の約束をした藤井ミナミが某H社オフィスを颯爽と歩きながら心の中でつぶやく言葉だ。(確か。)
あのときの藤井ミナミはいくつだっけか。確か28という描写があったはず。
なんと!藤井ミナミさえ追い抜いたか。そろそろ田中女史の年齢も見えて来るな。
(ぜひ『サプリ』読んでみてください。身につまされます)
そう、「約束のある女子は最強」なんて真顔で思ってたときあるなあ~
遠い目。
かと思いきや、それ今です、今。
本当にめんどくさいな俺、
こじらせもここまで来ると、自分でとぼけて自分でつっこまねばならん。
そんな時代あったなあ~とかカッコつけてないで、
ああ、そうですよ、また恋愛してますよ。なんだよこれ。
もうおまえはセカンドバージンか!と。違うけど
管理職の忙しさを舐めてはいけなかった。
未読メール200件規模の彼のメールボックスに
わたしのメールはどうやら深く埋もれていたらしい。
メールを送ってから1週間以上経ったその日、
電話で話したあと、どうやらこれは読んでいないなと思って
当該メールに「未読ならば取り消し」アクションを発動したら
普通に「取り消し成功」って返ってきて
日曜の夜にメールを送ったことを反省した。
前週来た大量の未読メールのなかに埋もれるのは必至だった。
しびれを切らして電話をしたのは2日前のこと。
1週間以上連絡を絶っているなか
全社集会で何回か顔を合わせ「おうおつかれ」「おうおつかれ」のやり取り。
こっちが1週間メールをスルーされている緊張感ですれ違うのに
向こうの無邪気な「おつかれ」ぶりときたら。
「ああ、あれは読んでないか純粋に忘れてるかだな」
と納得したわたしは、帰り道、電話することにした。
繰り返し出てくるフレーズすぎて自分でも飽きてきたが
29にもなって、電話するのに1時間は悩んだ。
電車で移動しながら40分、降りて乗り換える合間で20分。
乗換駅の改札前でやっと決意して、ああもういいや、と発信した。
呼び出し音を聞きながら
「うわ、鳴っちゃってる」
とつぶやく。
呆れる。高校生かよ。
でも、呼び出し音が止まる瞬間っていつも軽く感動する。
これはどの恋愛でも、いくつのときでも、いつでもそうだ。
向こうの世界とつながった瞬間の、あの無音。
どっと向こうの空気が流れてくる感じがする。
受話器の向こうに全神経で耳をそばだてる。
幕が落ちて、
真っ白なスクリーンが現れて、
そこに相手が映るまで、食い入るように見つめる感じ。
ほんの一瞬の、「あ、つながった」っていうあのコンマ数秒のなかで
ぐるぐるぐる、感情はめまぐるしい。
電話に出た相手は寝ぼけた声を出していて、まだ23時だというのに意外だった。
「あ、ごめん寝てた?」
「うん。もう体力の限界だと思って」
「忙しそうだったもんね。体調よくないの?」
「あんまりよくない。どしたの?」
「どうもしないけど元気かなと思って。」
「元気じゃないよー」
2,3言葉を交わして、すっと降りてきた間にわたしは言葉を滑り込ませる。
「じゃあ、おやすみ」
おやすみを言う関係というのは、すでにちょっと特別だ。
どんなに深夜に連絡しても仕事仲間とは「おつかれ」だから。
1時間悩んで、会話したのはものの4,5分だったが、
おやすみを言えたことだけで十分。
「うん、ごめんね。今日は寝るわ。また連絡する」
と彼は言った。
「また連絡する」!!!!
「『また連絡する』!!!!」じゃねーわ、ふつうだろ、とセルフつっこみしたくなるのを抑えて
いやいや、良かった。ほっとした。
もうこれ、察しろってことかなー
もうナシってことかなー
などとあれこれ考えた時間が本当に無駄でした。もっと仕事すりゃよかったわ。
っていうか本当に管理職の忙しさ舐めてた。
わたし暇だわ、今。全然まだ働ける。(謎のモチベーションUP)
だってわたしには「また連絡する」がある。
「約束のある女子は最強」的感覚。
その「連絡する」が今から1週間後であっても無問題。
全然大丈夫。
忙しいってすごいし、「連絡する」っていう予告がここまで力を持つ?
すごい。
ま、2年前くらいまでのわたしなら、ここらでしびれを切らして
「おいてめーやる気あんのかコラこっちは好きなんじゃボケ」
とかって結論を迫ってしまって
ポシャらせてきたわけだけれども。
まあ、いいか。と思えるのはなんだろう。年の功?
それはこの際なんでだっていいけど
「わたしには『また連絡する』がある」とか心のなかでリフレインして
トイレでニヤニヤする29歳。こわいよね。
仕事しろ。
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