2015年8月13日木曜日

魔法が解けても

あー、次に会ったときもう魔法が解けてたらやだなぁ。

って思いながら帰ってきた。
終電で私鉄の駅を降りて、人気のない駅前のロータリーを抜けて、
一歩一歩、足を投げ出すように歩きながら。


あー。うれしかったけど、
今夜だけの魔法だったらどうしよう。


投げやりに顎を空に突き上げると
ちょっと赤っぽい上弦の月が目に映る。


ああ、でもそうか。
魔法が解けても、魔法が解けたあとにも、
愛してもらうのが一番なんだな。


それはちょっとした発見だった。

いつも魔法の力・・・というか、下半身の力・・(なんだ下衆な話かよ、と思ったでしょう)で、
ベッドに持ち込んで、体裁はぜんぶ後付け。

親友であり仕事の後輩でもある28歳男児も
「や、だって、好きかどうかなんて寝てみなきゃわかんないでしょ」
という主義の持ち主だし(同感)
子宮あたりの熱に浮かされて、雪崩れ込んで
そのままそれを恋とか愛とかだと信じてしまう、
そんな恋愛を当たり前に思ってきた。


だからこんなふうに、
プラトニックに関係を築いてきて、
終電間近の夜更けに、日本酒舐めながら


「今日一緒に帰ったら流れでしちゃうけど、そうじゃなくてちゃんと考えたい。
 えーと、しっかりしますので・・
 え、っていうかそっちはどうなの」

「いや・・わたしは機が熟すのを待っているというか・・
 きっとわたしたちのペースとかリズムがあるから。
 昔みたいに『いますぐこの人を手に入れたい』っていう焦りは持ってないよ」


とかって、
中2なんだか30なんだかわからないような会話をして、


「ああ、でもそんなの覆したくなっちゃうな」

って終電から線路を眺めながら手をつないで、
それでも「今日のところは帰ろうかな」ってそれぞれの駅で降りる、


そんなはじまりが新鮮すぎて戸惑っている。


それで、

『ああ、これは今日だけの魔法だったのかな。
 魔法が解けたら今日のようには二度とならなくて、
 ただ日和ってやらなかっただけのふたり、ってことになったらどうしよう』

なんて、ベッドインの選択肢に後ろ髪引かれていたりする。

なんだけど、

世の中のちゃんとした女子はこうやっていたのかもしれない!!!

なんとしても今日、手に入れる!とかってベッドインしていないのかもしれない!!!

魔法が解けても、好きだ、一緒にいたい、って思ってもらえるまで
待ってからベッドインしているのかもしれない!!!

って思った。気づいた。
遅くね????www


まあでもね、あのー
世の中のちゃんとした女子のそれが計算だったとして、
今回のわたしはただただピュアに、
ふたりのペースが満ちてくるのを待っていられているので、
よいかもしれない。

ちょっとあのー
過去の習慣で「ベッドインしたほうがよかったのでは?!」とか
「据え膳くわぬは・・じゃね?!だいじょうぶこれ?!」とか
さざ波程度にざわついているだけでして。

こうやって恋愛を積み上げることができるようになったなんて
これが大人?

この先には何が待つの?
どんなどんでん返し?
何の罠?

穏やかではいられない冒険好きの、マゾヒスティックな強迫観念に震えながら
それなりに恋愛をしてきた、互いの枯れ具合がちょうどよい30どうしの恋愛を
一歩一歩、歩いております。


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